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亡きジョブズに捧げる名スピーチ全訳


投稿日:2011年11月28日  投稿者:hara
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 スティーブ・ジョブズが亡くなってからちょうど2週間後に、アップルは本社キャンパスで社員を集めた追悼式典を開催しました。世界各地のアップル社員やアップルストアのスタッフもWEBキャストを通じて参加。式典ではジョブズ氏をよく知る4人が、後継者、親友、社外取締役、もの作りのパートナーという異なる立場からスピーチを行い、同氏を偲びました。各スピーチの日本語訳は本誌1月号の誌面「Command + Eye 02」(60〜63ページ)に掲載しています。ここでは、誌面のスペースの関係上、省略した部分も含め、各スピーチの全訳を掲載します。式典の映像は、ユーチューブなどで観ることができます。

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Tim Cook 
アップル最高経営責任者(CEO)

  おはよう。今日これほど多くの関係者がここに集まり、さらにたくさんの人たちが世界中の遠く離れた場所から参加者しているのを非常にうれしく思います。いま世界中のリテールストアが店を閉じ、そのスタッフも皆この式典を見ています。
 私のスピーチを始める前にスペシャルゲストを紹介しましょう。スティーブの妻であるローレン・パウエル・ジョブズさんが、今日われわれの式典に参加しています。(ゲスト席に向かって)ローレン(と呼びかけると、スタンディング・オベーション)。ローレンさんはスティーブの大きな支えとなっただけでなく、われわれにも力を与えてくれました。特にこの数週間は彼女の存在に助けられました。
 私がそうであったように、ここに集まる多くがスティーブの逝去の悲しみに沈みながら長い時間を過ごしてきたと思います。この2週間は、これまでの私の人生で最も悲しい時間でした。しかし私が知っているスティーブなら、この状況がアップルを浮揚させる雲になり、彼がこよなく愛したアップルへ戻ることに我々が全力を注ぐのを望んだでしょう。その精神を共有し、全ての社員・関係者を集めてスティーブのたぐいまれな生涯と数多くの偉業を讃えるために、今日のこの式典を計画しました。

 世界中の人々がスティーブの死に深く心を動かされ、口々に彼がどのような存在であったかを語っています。ビジョナリー、創造力に富んだ天才、反逆児、常識にとらわれない人、オリジナル、最高のCEO、史上最高のイノベーター、不世出の起業家、子どものような好奇心の塊、天才の心を持つ人…。これらはすべて真実であり、これらすべてがたった一人の男性に対する言葉なのですから驚かされます。しかしスティーブをよく知り、彼を愛した人々にとって、こうした言葉だけではいずれも、またすべてを合わせても、スティーブを十分に表すのに適切ではありません。彼を理解するということは、彼の生き方や言動、彼が私たちに残してくれたものについて考えることです。

 彼はいくつもの偉業を成し遂げてきました。「キャリアの中で1つでも革新的な製品に取り組めたら素晴らしい」と彼は語りましたが、私が数えたところでは彼には6つあります。1984年のMacintoshは、パーソナルコンピューティングとデスクトップ出版の世界を変えました。製品発表向けにスーパーボウル中継で流した広告は、広告の常識を変え、今も史上最高の広告として広く語り継がれています。
 また、iPodとiTunesで、スティーブは人々に音楽の楽しさを思い出させ、音楽の聴き方を変え、音楽産業を改革しました。iPhoneは携帯電話産業に変革を起こし、スマートフォンのあるべき形を再定義しました。今ではiPhoneなしの生活など想像できないという人たちが世界中に存在します。そして昨年、iPadという新しい製品を投入し、当初は誰も見向きもしなかった製品を日常の必須のアイテムにしました。彼はまた、ピクサーという最高のアニメーションスタジオを作り上げ、アニメが子どもたちだけのものではないことを示しました。これら6つでは少ないという人もいるでしょう。ほかにも彼が主導したアップルの小売戦略は、今では世界中の小売業者が目標にしています。

 彼は生涯を通して、私、そして多くの人たちの道を照らしてくれる奥深い言葉を語ってきました。「シンプルにまとめるのは複雑にするよりも難しい。シンプルにするためには考えをクリーンにするように苦心する必要があるが、最後には報われる。なぜなら一度辿り着けば、山をも動かせるからだ」「技術だけでは十分ではない。リベラルアーツや人間性と技術の組み合わせが私たちの心を躍らせる」「取り組んでいる何かが素晴らしいものになったら、それを止めて他の素晴らしいことに取りかかるべきだ」。
 最後に、彼はこんな言葉も残しました。「ビジネス上の私のモデルはビートルズだ。彼らは、4人がお互いの負の面を抑制し合っていた。相互にバランスを保ち、全体が各パートの足し算よりも素晴らしいものになった。それが私のビジネスに対する見方だ。ビジネスの素晴らしい成果は1人だけでは達成できないが、チームの力なら成し遂げられる」。
 私個人はスティーブの行動や言葉に加えて、彼の信念に大きな影響を受けました。人生の喜びは探し求めるものというのが、私がスティーブから学んだ最大のレッスンです。実際にそれは彼の毎日の生活から見受けられました。スティーブが大衆に従うことはありませんでした。あらゆる物事を自身で深く考えていました。私が知る限り、彼はもっとも因習にとらわれない思想家でした。そして正しいと思ったら、それが容易でなくとも常に行動に移し、単なる「グッド」をよしとせず、とてつもない「グレート」のみを求めました。また、すべてにおいて美を重んじ、アップルのすることがすべて美しいものであれと主張していました。現状に満足している人には未来はないと信じ、より高みを目指して自身と周囲のチームを強く駆り立てていました。これらが彼の生き方であり、これらが彼が成し遂げたこと、語った言葉、そして彼の信念です。

 彼が遺したものは、もう1つあります。それは我々全員です。彼がいなければ、90年代の終わりにアップルは潰れ、我々の多くが出会うことはなかったでしょう。彼の家族を除いて、アップルはスティーブが創り上げた最高のものです。彼は最後の日までアップルについて考えていました。そして、「スティーブならどのように行動した?と問うな」というアドバイスを最後にくれました。「正しいと判断したことを、ただ遂行しろ」と。ウォルト・ディズニーが亡くなったあとに誰もが「ウォルトなら何を望んだ?」と考えるようになってディズニーが麻痺したことを挙げ、アップルが同じ状況に陥らないように望んでいました。

 スティーブがアップルに復帰したとき、彼は、アップルの社員にとっての基本的価値と信念を示す広告を作りました。1年後にiMacが登場するまで、当時の私たちは素晴らしい新製品を持っていなかったので、スティーブのヒーローをフィーチャーした広告を作ることになったのです。そしてスティーブが言葉の一語一語まで丁寧に作り上げたこの広告は、彼の魂の根幹に触れるものになりました。テレビで放送されたのはリチャード・ドレイファスがナレーションを務めたバージョンで、スティーブ自身がナレーションしたバージョンもありましたが、広告が彼個人のことだと見なされたくないという理由から、それは使われませんでした。私は彼が亡くなってから初めて聞きましたが、深い感銘を受けました。彼が書いた言葉を彼の声で聞いてもらうために、スティーブが読む「The Crazy Ones」を再生します。
<The Crazy Onesが会場に流れる>
黙とうを捧げ、スティーブが私たちにとって、そして世界にとってどのような存在であったかを想いましょう。
<黙祷>
ありがとう。ここから見えるみんなの姿は、スティーブが間違いなく喜んだはずです。


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Bill Campbell
インテュイット会長・アップル取締役員

 私は1983年に欧州のコダックからアップルに移ってきて、すぐにスティーブと、彼のMacチームと仕事を始めました。それは、なんともすごい体験でした。スティーブはあらゆることに異議を唱え、あらゆる疑問について私に明確な答えを強いてきたのです。経験は無関係で、素晴らしいアイデアを重んじました。彼が古いものを信じなかったのは、彼が独特な存在になりたかったからではなく、単によりよいものを求めていただけなのです。

 共に取り組んだすべての作業、広告、小売コミュニケーション、製品、その細部、内側と外側。私は彼から本当に多くのことを学びました。例えば、私が営業部門に所属していたときに、彼は営業組織の改革に乗り出しました。営業組織の社員を“普通の人々”(rest of us)に見えるようにしたかったのです。販売代理店から猛反発を受けましたが、ある夏に組織改革を断行し、彼が思い描いたアップルを実現できそうな400人の人材を雇用しました。

 Macintoshの素晴らしさを思い浮かべてください。それでも受け入れてもらうのは困難でした。そこで彼のやってきたことを思い出してください。例えばMacintoshが大学で受け入れられるのを確実にするためにアップルユニバーシティコンソーシアムを用意しました。世代を超えてMacintoshが浸透するように尽力したのです。ティムが触れたデスクトップ出版、レーザープリンタ、そしてポストスクリプト。彼はフォントとデスクトップ出版に狂信的と言えるほど熱心に取り組みました。

 ところが、Macは立ち止まってしまいます。スカリーによってドアの外に追い出された彼は、そのままアップルを去りました。アップルの終わりを感じた私も間もなく退社しました。しかし、私たちの結びつきが途切れることはありませんでした。一緒にいると、彼はいつも私にちょっかいを出してきました。「どうしておまえは今もそこにいるんだ?」なんて言うんです(笑)。空港までリムジンに乗っていく贅沢な時間を楽しもうとしたら「そんなとこにいないで、何か重要なことをやれ!」です(笑)。

 そしてローレンと出会い、彼の人生は変わりました。ここにいる皆さんは、その後の奇跡の参加者です。アップルがNeXTを買収し、彼はアップルに戻ってきました。1997年8月19日、彼は私もその一部になることを認めてくれました。それから、私はさらに多くのことを学びました。彼は変わった。情熱的で卓越したカリスマだった彼が、素晴らしい経営者へと成長した。その変化に私も大きな影響を受けました。全てにおいて細部までこだわった。製品はもちろん、ビジネス組織を運営する上で生産地から消費地までの物流の合理化を徹底した。そして、全てをスムースに動かすためにオペレーションがどうあるべきかというビジョンを共有できるティムが加わりました。

 彼はほかの人たちには見えないものを見抜く、驚くべき知性や思考力を備えていました。ティムが挙げた数々の偉業を思い出してください。アップルストア、iPod、iTunes、iPhone、iPad…。自分たちのデバイスを使いこなせなかったユーザを愚か者と見なすテクノロジー産業のリーダーたちに対して、彼は「もし彼らが自身でデバイスを使いこなせるなら、確かに私たちは愚か者だ」といい放ちました。そして、彼は未来を見ていました。一緒に歩いていると、私が想像すらしたことがない話をするのです。彼を止めるものはなく、前進し、皆を前進させ続けてきました。なんと素晴らしいリーダーになったことでしょう。そして優れた人たちを雇用し、影響を受けた彼らも同じように行動し始めました。周りを見回してください。まさに、アップルを、さらに前進させているあなたたちのことです。アップルは政治のない会社なのです。

 およそ7年半前に病に冒されているのを知ったときも、スティーブは打ちのめされることなく、全力で戦いました。彼はアップルをこよなく愛していました。上回るものがあるとすれば、それは彼が愛した家族だけでしょう。彼は活力を失わず、自らの魂に挑みました。彼は愛し、与え、学び、そして私たちを導きました。手がけるすべてのものに卓越した成果を要求しました。しかし、7年半が経過し、彼は愛した人々や近しい人たちに打ち明けなければならないほど衰えが進んでいました。

 私たちは親友です。私は取締役の1人でもあります。彼は取締役会を愛していました。CEOからの辞任を決めたときに、彼は直々に私たちに告げることを望み、取締役会の場に入ってきました。ちょうどスコット・フォーストールが新しい携帯電話を説明し、Siriのデモをやっていたときです。彼はいつも私たちを楽しませてくれ、私たちはいつもただ魅了されていました。スコットがSiriを披露していると、スティーブが部屋の向こう側から「電話をよこせ」といい出しました(笑)。スコットは「こ、これは私の声にチューニングしてあるので」と慌てました。それでも「電話をよこせ」と聞かず、スコットはスティーブに電話を手渡しました。彼はSiriにいくつか簡単な質問をしたあと、「キミは男か、女か?」と聞きました。すると、Siriは「まだ性別は割り当てられていないのですが」と返しました(笑)。スティーブは私たち全員と、そしてアップルに関するすべてのことを愛しています。ありがとう。今日はこの場に集まってくれて、ありがとう。


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Al Gore
元アメリカ副大統領・アップル取締役員

 皆さんはスティーブ・ジョブズの物語をよくご存じだと思います。彼が歩んできた非凡な人生をご存じですね。ここにいる誰もが、それぞれの道で、その一部となっています。ティムとビルがスティーブ個人について、そして彼の偉業について素晴らしいスピーチを行いました。そこで私はこれからの数分を、私たちが抱いた思いや、世界中から溢れ出てきた感情、それらがアップルや私たちにどのような意味を持つのかについて語ることにします。

 私はナッシュビルのアップルストアで、世界中のアップルストアで人々が見たのと同じ光景に触れました。あなた方はクパチーノで痛切な思いを味わったと思います。自宅や職場、学校の寮、世界中のあらゆる場所で同じ痛みが分かち合われました。その感情の波の激しさと強大さに、数多くのコメンテーターが驚きをあらわにしました。これはなんなのか? 嘆き? もちろんそうでしょう。尊敬? 敬意? 私は、その核心にあるのはまったく予期せぬ感情、それは偽りのないラブだと思うのです。
 テクノロジーライターのジョナサン・ウエバーは、このように書いています。「私たちの時代でもっとも有能かつ影響力のあるビジネスマンを選ぶ競争なら、常にジョブズの楽勝である。大差の勝利だ」。しかし、彼がやってきたのは、そんな競争よりもはるかに深遠なことでした。ジョブズは、人々が愛せるテクノロジー製品を作れる世界で唯一の人物であることを示したのです。ラブは、まさにぴったりの言葉です。

 テクノロジーの背景としてラブを語るのは難しい。なぜならテクノロジーは我々を愛さないからです。私のある近しい友人のガールフレンドが、ある日Siriにたずねました。「Siri、私のことを愛している?」。Siriの答えは「私は、あなたを尊重します」でした(笑)。しかし、人々の間の垣根を取り除き、人々がつながりたいところに結びつけてくれるようなテクノロジを使う過程で、ユーザーは愛を体験できます。

 アップルストアやアップル本社、世界の様々な場所に貼られたいくつかのメッセージが、このプラザのスクリーンに映し出されています。それらを見て歩きながら、私は何度もくぎ付けになりました。すでに読んだかもしれませんが、いくつかを紹介します。まずメアリー・ベスから「スティーブ、私たちはあなたを愛しています。私たちのためにやってくれた全てに感謝します」。チリのサンチアゴからやって来たフランシスコ・バレンズエラ・ウエルテ、「この写真に写っている私の祖母は1カ月前に癌で亡くなりました。最期の時にMacBook Proを使って、ベルギーに住む私の姉妹と話せました。祖母はコンピュータのことが全く分かりませんでしたが、容易に孫とやりとりしていました。スティーブ・ジョブズによって開拓され、開発された直観的テクノロジに感謝します」。次は4歳の子供について書いたメッセージです。「スティーブ、4歳の娘にテクノロジーの世界をもたらした製品を作ってくれたことに感謝します。私のiPhoneは、彼女が初めて使い方を学んだデバイスで、今ではすっかり虜になっています。あなたの製品を使って娘が笑顔になるのを見るたびに、あなたのことを思い出すことでしょう」。最期にチャールズからのメッセージ、「愛しているよ、スティーブ。雲(クラウド)の上から僕らを眺めるのを楽しんでくれ!」(笑)。

 スティーブが去った時に、数百万人のラブが彼と共にありました。人々がアップルを好きになる理由の一つは、様々な垣根を取り除いてくれるアップル製品がラブに通じるからではないでしょうか。iPhoneやiPadのようなテクノロジに中毒性があるかを脳スキャニングを使って調べた神経科学者の記事が数週間前にニューヨークタイムス紙に掲載されました。読んだ人もいるかと思います。彼の予想と異なり、結果は「中毒性なし」でした。反応が確認されたのは、中毒的なふるまいとは関係のない脳の部分だったのです。代わりに、島皮質に興奮が見られた。そこは、まさに愛情によって活発になる部分であると著者は記しています。
 スティーブの死去のニュースを、iPhoneやiPad、iPod touch、またはMacで知り、読み、そして見た多くの人たちが、それを皮肉だと指摘しています。その感情が彼らの心から生じたとすれば、世界中にスティーブ・ジョブズの愛情の一片が数百万も存在するという証しです。つまり、あなたたちは、人々がアップルとの関わりから喜びやラブを感じるのを手助けする重要な役割を担ってきたのです。

 では、未来はどうなるのでしょう?6・7年前から取締役会において、スティーブは他の関心事と同じように、リタイアして会長になる時への備えに真剣に取り組み始めました。いくつかの異なるプランを用意していましたが、いずれにせよ、それは彼が継承の準備をしなければならないと意識していたことを意味します。そして、ティム・クックと語るのに長い時間を費やしました。ティムが「どうやって?」とたずねれば、彼がスティーブならどうやる?と問うべきではないと返しました。しかし本質的にそれは、あのスタンフォード大学でのスピーチで卒業生に贈った「自身の内なる声に忠実に」というアドバイスを、ティムにも授けたことになります。エグゼクティブチームが機能し続けるように彼は準備し、下地を整えました。彼らは、文句なしに世界最高のチームです。そして、ここにいる全員もそうです。彼らと、あなた達はすでにそれを証明しています。この先、何度も証明し続けることでしょう。

 私と同じようにスティーブを愛していたなら、また私と同じようにアップルの一部であるのなら、これからどのようになすべきかを心の深い部分ですでにわかっているはずです。スティーブも表現したとおりです。そのラブを形にする最善の方法は、クリエイティビティや情熱として全力で注ぎ込むことです。そうすれば、あなたたちがデザイン、設計、製造、販売する非常識なほど素晴らしい製品の中に宿ります。今日ある製品がすでに数百万人の人々の感情や心をつないでいます。そして間もなく登場する新しい製品にも数百万人が恋に落ちる。それが何度も繰り返されるでしょう。
 登壇するときに向こうのスクリーンを見ていたら「スティーブ、あなたはテクノロジーだけではなく、スピリットも残してくれた」というメッセージが映し出されていました。あなたたちが手がける製品に対する世界中の人たちのラブに、スティーブの精神は生き続けます。

 iPod、iTunes、Mac、iPadなど、彼のすべての創作物の中で、最高のものはアップルだと私は確信しています。だから、本物にこだわり、妥協することなく卓越を追求する姿勢を継続し、そして育んでください。それがアップルです。自身の内なる声に耳を傾け続けてください。もし十分によいものでないと思えば、主張し続けてください。十分に素晴らしいものでないときも同様です。アップル製品が本当に非常識なほど素晴らしいものになるように主張し続けてください。人々の生活をよりよいものに変える未知の製品、人々が繰り返し惚れこんでしまうような製品を作り続けてください。あなたたちは、素晴らしいグループに属しています。毎日の生活を通じて何度もラブを感じさせるチャンスを世界中に与えられる特権を持った男女なのです。
 スティーブにとってビートルズがビジネスモデルだったと、ティムが語っていました。そこで私はビートルズからの引用で終わろうと思います。「結局のところ、あなたが受け取る愛は、あなたが与える愛に等しい」。


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Jonathan Ive
アップル・インダストリアルデザイングループ担当上級副社長

 スティーブはいつも私に「ヘイ、ジョニー、馬鹿げたアイデアがあるんだ」と話しかけてきました。それは時には本当に馬鹿げたアイデアだったり、時にはさらにひどいアイデアでした(笑)。しかし、部屋の空気をすべて吸い取り、お互い黙り込んでしまうときがありました。大胆で、クレイジーで、そして素晴らしく崇高なアイデア。または、静謐でシンプルながら細部まで巧妙に深い意味が隠されているアイデア。
 スティーブはアイデアを愛し、もの作りを好んだと同時に、創造的なプロセスに最高の敬意を払っていました。アイデアが最終的には強力な力になり得るとしても、それは壊れやすく、形になりにくく、簡単に見過ごされたり、妥協や失敗が起こることを彼は誰よりも深く知っていたのだと思います。
 私は彼が夢中でアイデアに耳を傾ける姿が好きでした。可能性を見抜く力、類いまれな感性、鋭くそして的確な意見が好きでした。棘もありましたが、彼の特異さや鋭い洞察力には美があると、私は心から信じていました。
 広く知られていることだと思いますが、スティーブの卓越したセンスはもの作りのみに発揮されたのではありません。彼と一緒に旅行してチェックインを済ませて部屋に入ると、私は必ずドアの近くに荷物を置きます。でも、荷は解きません。そのままベッドの上に座り、お決まりの電話がかかってくるのを待つのです。「ヘイ、ジョニー、このホテルは最悪だ。ここを出よう」。

 目まいがするような興奮を覚えながら、誰も目することはないであろう製品の一部分に何カ月もの時間を費やす。そんな時間をともに過ごしたときに、彼はよく常軌を逸した狂人たちに精神病院が乗っ取られたというジョークを口にしました。我々がこだわるのだから、それは正しいことだと本当に信じていたから、私たちはそこまでやったのです。機能的な必要性をはるかに超えてこだわることに、彼は重力を感じていたというか、ほとんど市民としての責任を果たすかのように取り組んでいました。
 必然的かつシンプルで簡単なものに見えるものを追い求める。それには犠牲が伴います。ここにいる誰もが犠牲を払ってきたでしょう。しかし、もっとも犠牲を強いられたのはスティーブです。彼は誰よりも苦心し、誰よりも気をもみながら、「これでいいのか? これが正しいのか?」と絶えず問い続けていました。彼は数多くの成功と成果を積み上げてきましたが、達成できて当たり前と決めてかかったことはありませんでした。アイデアが出てこないとき、プロトタイプが失敗したときに、大きな目的と信念を抱いて、いずれ素晴らしいものを作り出せると信じる。そう決断したのです。

 だから、達成したときの喜びはひとしおでした。彼の情熱と「とうとうやったぞ!」と無邪気に喜ぶ姿が好きでした。安堵の気持ちも含まれていたと思います。ついにやってのけ、それは素晴らしいものになった。彼の満面の笑みが目に浮かぶでしょう。すべての人のために素晴らしいものができたことを祝い、皮肉に打ち勝ったことを満喫し、いい訳や「そんなことはできない」と何百回もいわれ続けた言葉を返上する。彼はいつも「どうでもいい」といっていたけど、それはまさに美と純正さの勝利だったと私は思います。
 彼は私のもっとも親しく、もっとも信頼できる友人でした。15年近く一緒に仕事をしましたが、今でも彼は私の「アルミニウム」の発音がおかしいと笑います。この2週間、誰もが彼との別れ方に悩んだでしょう。私はシンプルに「ありがとう、スティーブ」といいたいと思います。この才能豊かな人々のグループを鼓舞し、まとめ上げてきた、あなたの素晴らしいビジョンに感謝を捧げたい。あなたから学んだすべてのことに、そして我々がこれからもお互いに学び続けられることに対して、ありがとう、スティーブ。

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