iBooks電子書籍で ピンポイントにアプローチ|MacFan

教育・医療・Biz iOS導入事例

【医学生向け iPad 活用本】

iBooks電子書籍で ピンポイントにアプローチ

文●堀永弘義

Team医療3.0の活動も行うホノルル在住のtlapalli inc代表・堀永弘義氏に、自身が出版に関わったiBooks向け電子書籍『医学生とiPad』について寄稿をお願いした。なぜ医学生とiPadなのか?

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なぜ医学生とiPadなのか?



iPadの活用法として電子書籍を挙げる人はまだまだ少ない。アメリカだと書店も少なくなり、電子書籍への移行がスムースに行われたと感じる。今回、私のプロデュースした電子書籍は、医療関係者向けである。数年前にiPhone向け医療アプリ「添付文書」を自分で開発してアップストアで公開したところ、想像以上にダウンロードされ、現場で使用された。現在もダウンロード数は伸びている。これは医療機器、医療サービスは高いものという概念を覆し、iPhoneがあれば無料、または安く使えるということを世の中の医療関係者が知り、ダウンロードした結果といえる。

この後、今度は医療関係者向けの電子書籍を出そうというアイデアが思いついた。医療関係の書籍は都市部の大きな書店の一角でのみ取り扱われているのが現状だ。そして出版部数が少ないという理由から価格は一般書籍のそれと比べて2倍以上もする。さらに、たとえ出版されても改訂などは長いこと行われないケースは往々にある。これら3つの問題点を電子書籍ならば解決できると考えた。

子書籍であれば、離島であっても海外であっても欲しい本はすぐにダウンロードできる。忙しい医療関係者にとってこれは大きい。そして値段の面でいえば、紙の書籍と比べて安く抑えられる。現在販売中の私がプロデュースした電子書籍は500円で販売している。

2013年11月にiBooksストアで販売開始した電子書籍『医学生とiPad』は、すでに3回のアップデートを行い、誤字脱字の訂正だけではなく、本書で紹介しているアプリ情報などの更新も行い、内容面でも大幅に増やしている。一般の書籍ではまだまだ電子書籍のメリットが広く感じられていないかもしれないが、少なくとも医療分野の書籍では電子書籍が勝っている。特に日本ではiPhone所有者が多いため、アップルIDを持っている人は多く、それで決済できる層の人達は多いことになる。また、医療系の良質なiPhone、iPadアプリがアップストアには多数揃っていることもあり、医学生はiPadを使用する傾向にある。iPad向けに電子書籍を製作した理由はそれらである。読者をピンポイントに絞ることが成功の鍵であると感じる。現在、医療関係者向けだけではなく、『視覚障害者とiPad』という、これも出版社があまり手を出したがらない分野の書籍を製作中である。

次に、学習にiPadを使用するという点だが、『医学生とiPad』を執筆した東北大学医学部樋口賢太郎君が本書の中で、「上手にiPadを使って勉強する部分と、iPadを横に置きながら勉強する方法」を書いている。確かにiPadが学習に使えるかどうかという議論になると、iPadですべてのことができるのかという見方になりがちだが、そこを最初から排除している。この点は学習だけではなく、ビジネスとiPadの関係などにおいても適合するだろう。紙のメリット、電子書籍のメリット、鉛筆のメリット、タッチパネルのメリットを的確に実践で使いこなしているあたりは、彼のiPadを学習に使う思いが、学習だけではなく他の分野のiPad導入を考えている人にも役立つ。

また、広く学習という意味では、医学部の場合は教科書代の高さや多用される図、写真など、iPadを学習に使うことが優れていると思えるが、これが小・中学校などの全教科に使うとなると少し考えてしまう。「せっかく導入したのだから全教科に使おう」には落とし穴がある。iPadは見て学習、調べて学習するだけの端末ではない。向き不向きのある教科を無理矢理型にはめようとせず、柔軟にiPadが持つ機能を理解し、臨機応変に使いこなすことが教育者側に求められるスキルだろう。

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昨年アップルストア仙台で行った『医学生とiPad』イベントでは、東北大学医学部の学生以外にも、薬学生、歯科医、医療機器メーカーの方などから好評を得た。



『Mac Fan』2014年4月号掲載